メディカル マネジメント

  (Medical Management)(平成9年5月号)

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 これからの医療

  −情報発信と地域ネットワ−ク

          (株)日本医療情報センタ−

            岐阜市医師会理事 河合直樹

はじめに

 1993年、WWW(World Wide Web)にMosaicが登場して以降短期間に、インタ−ネットによる情報通信の大変革が世界中に起きました。そしてこの1、2年、社内ネットワ−クとしてのイントラネットの導入が大企業中心に目立っています。
 この一般社会の情報改革の波は医療の世界にも押し寄せており、これからの医療においては新しい情報通信を理解し利用するとともに、これを医師会や地域のネットワ−ク化に積極的に活用することが重要と思われます。 ここではインタ−ネット時代の情報発信と地域ネットワ−クについて自らの経験も含めてご紹介します。

インタ−ネットホ−ムペ−ジについて

 医師会のホ−ムペ−ジ(以下HP)はこの1,2年急速に増加し、現在数十の府県市郡区の医師会と日本医師会が開設しています。
 岐阜市医師会は昨年9月末にHPを開設し(http://www.hatelecom.or.jp/gifumed/)、現在半年で4000件以上のアクセスがあります。このHPの内容は医師会の関連施設や市内医療機関等の案内、感染症情報(O157、週間感染症情報)、一般向け記事(病気のトピックス、休日診療所案内等)、医師向け記事(診療メモ、研究会案内等)などです。
 岐阜市医師会HPはJamic Journal 5月号(4月25日発売)で医師会HPの事例として、他の3つの医師会HPとともに紹介されていますので、是非ご覧ください。
 一般向けの情報発信におけるHPのメリットとしては、1)内容の作成や変更が容易で、刻々と新しい情報発信が可能。2)全国、全世界に向けて情報発信できる。3)コストが安い(自作して委託運用すれば月1,2万の経費でも可能)ことなどがあげられます。
 ただHPが情報発信源として各方面から認められ、利用されるには内容の充実や更新に相当な努力が必要なことは事実です。

HP以外のインタ−ネット利用

 インタ−ネットではHPが最も注目されていますが、情報発信には電子メ−ル(E-mail、以下メ−ル)も有用です。不特定多数に発信するHPに比し、特定の相手への発信にはむしろメ−ルの方が確実です。メ−ルは1)FAXより伝送が速く、2)FAXや従来のパソコン通信にはないファイル(カラ−画像等も)添付が可能、など利点が多々ありますが、セキュリティに多少難があります。最近は画像と文書をデジタルカメラで撮って紹介状として発信する専用ソフトも出ています。メ−ルは医療機関の連携、医師会等の情報発信の手段として将来性が高いと思われます。
 なおメ−ルの利用法としてはメ−リングリストもあります。あらかじめメンバ−登録し、決められたアドレスにメ−ルを送ると他のメンバ−全員に自動的にメ−ルが配信されるシステムです。現在全国で医療分野別に多くのメ−リングリストが組織され、情報発信や意見交換に利用されています。
 テレビ会議はすでにISDN直結型のシステムやインタ−ネット利用のものが出ています。CU-SeeMeeというインタ−ネット利用のテレビ会議は、極めて安価(ビデオカメラ込みで3万弱)で簡便(アナログ回線やノ−トパソコンも可)です。White Boardで画像を同時に見ながら real timeな症例検討が可能で、特定の相手を決めての利用に有用です。
 以上のインタ−ネット利用の情報発信はいずれもセキュリティにやや問題があります。全世界からアクセスできる便利さと裏腹に、機密情報の発信には問題が残り、この解決には次のイントラネットが必要になります。

イントラネットについて

 インタ−ネットが世界に開かれているのに対し、イントラネットは閉鎖的なネットワ−クで、前者よりも安全性は高いといえます。ただイントラネットもインタ−ネット接続することが多く、この場合は外部からの侵入に対するファイアウォ−ルの構築が必要です。既に2,3の県医師会(愛媛県、愛知県等)で導入され、われわれも実験サ−バ−による試験運用(昨年12月開始)を経て、近々本格運用に入る予定です。
 先に述べたHP、メ−ル等もインタ−ネット利用よりは基本的に安全性が高いといえます。すでに従来のパソコン通信によるネットワ−クが構築されている地域もありますが、イントラネットの方がインタ−ネットのソフトを利用でき、画像が自由に扱える点で優れています。またサ−バ−もWindows NT4.0の普及で、安価な信頼性高いシステム構築が可能です。医師会内の諸連絡や医療機関の連携には、将来はイントラネットの利用が必要と思われます。
 ただこのイントラネットもデ−タ安全性確保やプライバシ−保護のためには個人認証に注意を払う必要があります。個人情報を扱う場合はアクセスしている人が本人か否かの確認のために、認証用のICカ−ド等の使用が理想的と思われます。またメ−ルも暗号メ−ル等が考案されています。
 このイントラネットは今後の地域ネットワ−クの根幹をなすもので、保健・医療・福祉ネットワ−ク等の構築に必要になると思われます。このような地域ネットワークの例としては、加古川地域等のシステムがあります。

その他の情報発信について

 パソコンが各医療機関に設置されるまでFAXは重要な情報伝達手段です。岐阜市で発生した昨年6月のO157集団発生では医師会FAX連絡網(各医療機関をリレ−伝達)が活躍しました。
 その後さらに短時間に確実に伝達するために4台のパソコンからFAXモデム経由で市内300医療機関に同報発信するシステムを構築し、9月のサルモネラ集団感染発生時には威力を発揮しました。そして今年4月には1台のサ−バ−から最高8回線発信できるFAXサ−バ−を導入し、市内全医療機関に短時間で緊急連絡できる体制を確立します。

今後の方向とまとめ

 この分野の進歩は極めて急速で、各地の事情も異なり、一律な将来予測は困難です。ここでは一般論的な将来像(個人的見解)を述べ、本稿をまとめたいと思います。
 全国などの不特定多数を対象とした情報発信は、今後インタ−ネットHPが主体となることは世界的趨勢からみてほぼ間違いないと思われます。
 一方、医師会内、地域内での情報発信、連携等は当面はFAXが主体で、今後各医療機関へのパソコン導入、および医師会、地域単位でのイントラネット等のシステムが構築された時点でイントラネットかこれに準ずるもの(パソコン通信等)に主役が移ると予想されます。
 このイントラネットは今後、保健・医療・福祉ネットワ−ク等の、種々の地域ネットワ−クの根幹になると考えられ、ICカ−ド、光カ−ド等を併用した住民サ−ビスや救急情報システム等も兼ねた多目的な情報ネットワ−ク構築に繋がることが考えられます。ただイントラネットと言えどもセキュリティやプライバシ−の保護には十分注意を払う必要があります。
 テレビ会議も遠隔医療やコラボレ−ション(共同作業)等に将来必要と思われますが、良質な動画像や高精細画像を扱うには、現在のアナログ電話回線に代わるISDN網、光ファイバ−網などのインフラ整備が必要です。
 以上の情報発信や地域ネットワ−クのシステム化には、行政との連携、医療関係者やコンピュ−タ−技術者等の協力が欠かせません。これら関係方面と調整を図りながら、地域社会や医療関係者等にとって、有意義なシステムの構築が望まれます。

(謝辞)岐阜市医師会岩砂和雄会長、同川出靖彦理事、同越野陽介委員と、本稿をご校閲賜った名古屋大学医学部附属病院医療情報部山内一信教授に深謝します。

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