食中毒

 食中毒の発生し易い季節です! ご注意を!!

食中毒には細菌によるもの、科学物質によるもの、自然毒(植物性、動物性)によるものがありますが、なかでも細菌性食中毒が一番多くみられます。今回は細菌性食中毒についてお話します。
 細菌性食中毒はその起こり方によって感染型食中毒と毒素型食中毒の二つに分けられます。感染型食中毒とは飲食物と共に体内に入った細菌が増殖した結果起こるもので、主な原因菌としてサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、ウエルシ菌、大腸菌(病原性大腸菌、毒素原性大腸菌)などがあります。毒素型食中毒とは細菌が産生した毒素を含んだ食品を食べることで起こります。原因菌には黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などがあります。
 急性胃腸炎症状が特徴で、腹痛(主に左下腹部痛)、数回の嘔吐、数回から数十回の下痢、発熱がみられます。
代表的な原因菌による食中毒の特徴について述べてみましょう。

◎サルモネラ食中毒

 人間の生活に密接に関係するイヌ、ネコ、ニワトリ、ウシ、ネズミ、等からヘビ、トカゲ、カメ等の爬虫類に至るまで幅広く分布しています。このため動物から何等かのかたちで人間に感染する可能性はきわめて大きいといえます。特に病死した動物などに触れたり、保菌動物が食品や食器に糞尿を付着させることで感染します。また、食肉特に輸入肉、鶏卵、乳製品等の汚染によっても感染することがあります。感染発症は菌数が1千万個以上にならなければ起こりません。夏に多くみられ、潜伏期は6ー48時間、平均12時間で発症します。発病は急激で、38度以上の熱、激しい頭痛、腹痛、嘔吐、下痢がみられますが、予後は良好で、2ー3日で諸症状は軽くなり、およそ2週間で治ります。死亡率も低く1ー2%です。サルモネラ食中毒を予防するには、ネズミ、ハエ、ゴキブリ等を近づけないように注意し、自然汚染の可能性が高い食品は加熱して食べるようにしましょう。

◎腸炎ビブリオ食中毒

 夏の細菌性食中毒の約70%を占めています。腸炎ビブリオ菌は海洋細菌で近海産魚介類や魚介類加工品、特に寿司、刺身、塩干魚等が原因食となる場合がほとんどです。気温が上昇し始める6月から9月末までが流行期です。潜伏期は10ー20時間で、腹痛で始まり、吐き気、嘔吐が起こり、同時に38度前後の発熱、下痢がみられます。便に血液や粘液が混じることもありますが赤痢のように゛しぶり腹゛にはなりません。経過は半日から1日のうちに症状は消失し後に軽い下痢、全身のだるさ、食欲低下が残りますが、これも数日で治ります。 食物が人の口にはいるまでの時間をできるだけ短くし、保存するときは低温保存することで菌の増殖を防ぐことが大切です。

◎黄色ブドウ球菌中毒

 食品中で産生されたエンテロトキシンによる毒素型食中毒です。毒素は熱に強く100度で30分間熱しても失活しません。にぎりめし、牛乳、乳製品、肉加工品、生菓子、豆腐などが感染源になります。潜伏期は1ー4時間と他の食中毒と比べて短いのが特徴で吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等がみられますが、発熱は通常見られません。一般に症状は軽く1ー2日で回復します。 この食中毒の原因の多くは、黄色ブドウ球菌に感染した傷のある調理人から食品に感染することによります。

◎ボツリヌス菌中毒

 ボツリヌス菌が産生した毒素によって起こる食中毒です。この毒素は神経毒として作用し胃や小腸で吸収され、主として末梢神経に作用し、神経の伝達物質の遊離を妨げます。
 「いずし」が主な原因食ですが、時に「すじこ」でも起こることがあります。潜伏期は12ー36時間ですが、数時間から数日に及ぶこともあります。一般に潜伏期の短いものほど重症になり易いといわれています。症状は最初吐き気、嘔吐などの胃腸症状や、全身倦怠感が出現します。ついで3日以内に脳神経麻痺症状(視力低下、呼吸困難、嚥下障害等)が起こります。続いて呼吸筋の麻痺をきたし死に至ります。発症後2ー10日で約半数の人が死亡します。死亡をまぬがれると麻痺やその他の後遺症を残さずに治ります。

 以上が日常良くみられる食中毒の原因、症状です。 食中毒には症状の軽いものから死に至るものまで様々です。日常の生活では、常に台所やその周囲、食器、手などを清潔に保つようにしましょう。また、食物の保存には充分注意して下さい。(飯沼順平)

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