学校保健

岐阜市における小児生活習慣病予防活動の現状

岐阜市では平成2年度からの5年間「小児成人病予防事業」として6校のモデル校の小学校5年生で血液検査を実施し、平成8年度よりこの事業を市内の全小学校5年生に拡大した。今回は平成24年度から令和5年度の12年間のデータに更新した。(令和2年度はコロナ禍により事業中止)

I.実施採血者数と実施率

実施率は毎年90%以上の児童が検査を受けていたが、平成30年から90%を下回り令和4年度はコロナ禍の影響がみられ過去最低の実施率(80.3%)であった。

  H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R元 R2 R3 R4 R5
実採血者数(人) 3,470 3,481 3,365 3,157 3,067 3,081 2,921 3,001  -  2,858 2,605 2,597
実施率 (%) 93.0 91.4 92.9 92.3 90.9 90.2 88.8 87.5  -  87.2 80.3 79.7
Ⅱ.検査項目と基準値

1~6までの検査項目について正常値と異常値(要注意者・要管理者)の基準を示した

  検査項目 正常値 要注意者 要管理者
1 総コレステロール
(脳梗塞・脳動脈硬化)
~199 200~219 220~
2 HDLコレステロール
(LDLコレステロールを除去する)
35以上 34~30 29~
3 動脈硬化指数
(動脈硬化の進行の度合いを示唆するもの)
1~3.4 3.5~3.9 4.0~
4 中性脂肪値
(動脈硬化・肥満)
~149 150~199 200~
5 尿酸値
(結節を作ったり、血管を傷めたりして動脈硬化)
~4.9 5.0~5.9 6.0~
6 血色素数 12以上 11.9~10.0 9.9~
Ⅲ.要管理者現頻度の年次推移
1.中性脂肪:異常値(要注意者・要管理者)の年次推移(%)

平成25年度を除いては事業開始当初から10%以下で推移しているが、コロナ禍の令和3年、4年はやや増加傾向がみられ原因としてコロナ禍の生活の影が考えられる。

H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R元 R2 R3 R4 R5
7.6 10.4 7.3 8.1 7.1 6.7 7.3 7.0  -  8.6 8.2 9.8
2.尿酸:異常値(要注意者・要管理者)の年次推移(%)

事業開始当初から毎年10%を越える子どもに異常値が出現しているが、コロナ禍の令和3年、4年の増加については実施率の減少が一因ですが、子どもたちのコロナ禍の生活の影響が考えられる。

H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R元 R2 R3 R4 R5
12.1 13.2 13.9 13.4 15.8 15.3 13.6 14.4  -  17.2 19.1 18.3
3.総コレステロール:異常値(要注意者・要管理者)の年次推移(%)

平成16年に20.7%の異常値を示したがその後20%を超えることはない。コロナ禍の令和3年、4年は過去に比べて低い数値となっており中性脂肪や尿酸のようなコロナ禍の影響はみられない。

H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R元 R2 R3 R4 R5
14.0 13.4 13.7 18.0 14.9 14.2 15.1 16.2  -  13.2 13.5 13.1
Ⅳ.総コレステロール、中性脂肪、尿酸のうち1項目異常値(要注意者・要管理者)の出現頻度

・岐阜市は、平成12年度より異常値が30%を超えるようになったため、平成17年度に「元気・健康づくり大作戦!小児生活習慣病予防対策モデル事業を立ち上げ、平成18年度から市内の小学校で対策事業を開始した。その結果平成19年度、20年度には該当者が30%を下回っていたが、その後30%下回ることはない。

令和4年度の異常値出現頻度が高いのは中性脂肪と尿酸に異常値の増加を反映したものである。

H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R元 R2 R3 R4 R5
29.3 31.2 30.1 33.8 32.5 30.9 30.9 32.8  -  32.8 34.1 34.4
Ⅴ.体格(ローレル指数)と総コレステロール、中性脂肪、尿酸のうち1項目異常値(要注意者・要管理者)出現頻度

・ローレル指数でみると肥満と1項目異常値の出現頻度には相関がみられる。特にローレル指数が160を超える者では出現頻度が高くなっている。小児生活習慣病改善に肥満対策は欠かせない。

  H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R元 R2 R3 R4 R5
139以下 25.1 27.3 26.5 30.7 28.8 26.4 27.0 29.0  -  28.8 29.4 28.7
140~159 45.1 46.7 44.7 47.8 52.9 51.4 42.9 51.5  -  47.9 45.9 50
160以上 72.7 73.4 70.9 70.2 68.8 72.1 74.6 64.3  -  62.1 71.2 73.9
Ⅵ.その他の異常値出現率

・貧血は2~3%で推移していたが25年度は4.2%となったが、動脈硬化指数は1~2%、HDLコレステロールは0.2~0.7%で推移し大きな変化はみられない


更新日:2024年3月

Ⅶ.心電図検診
[概要]

岐阜県医師会健康管理クリニックが実施する学校心電図検診は、小学1年、4年、中学1年、高校1年生の3学年毎の計4学年に標準12誘導心電図検診が行われます。
このうち要精査と判定された児童、生徒は校医の指示を受け心電図管理票を持参して専門医療機関において精密検査を受けていただきます。

[専門医による二次検診]

岐阜市ではH8年から要検査と判定された小学1年生を対象として、2次検診で心エコ-(心臓超音波)検査,専門医の聴診などを加えた専門医による二次検診を実施しています。

Ⅷ.運動器検診

 平成28年4月より学校の身体検査で永らく行われていた、座高検査が廃止となり、運動器検診が必須となります。
その理由は、成長期という重要な時期に、スポーツのやりすぎや逆にスポーツ嫌いで身体的に不具合が生じて、日常生活や学業に支障をきたしている児童が増えている事が背景となっています。運動器疾患を早期に発見して、健全な身体の発育を促す事が目的です。
学校から問診票が配布されますので、異常があればチェックしてください。特に第2次成長期にあたる小学校5年生と中学1年生は異常が発生しやすい学年ですので校医さんが重点的に肘と腰椎・背骨のゆがみを診察します。異常が発見されれば、整形外科医の専門的な診察を受けることになりますので、宜しくお願い致します。

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