てんかんへの正しい理解を

 てんかんは、百人に一人は生ずるありふれた病気なのですが、最も誤解されている病気の代表です。
「突然意識を失って倒れ、ひきつけ、泡を吹く発作を起こす、一生直らない遺伝病」との偏見が、今なお強く残っています。しかし正しく診断し、正しく治療さえすれば、 八割の方は発作がおさまり、就労・結婚を含む日常生活が可能になります。

   ここでてんかんについて分かりやすく説明しましょう。
 脳の中には多数の神経細胞があり、人間のさまざまな営みを円滑に行えるよう仕事をしています。そしてその仕事は「電気」の情報をやり取りすることで成り立っています。
何らかの原因でその細胞の電気が異常に増えてしまい、あたかも活火山が噴火するように電気の爆発を起こしてしまう人がいます。この噴火が「てんかん発作」であり、脳の中に噴火を繰り返す活火山ができてしまった状態が「てんかん」といえます。

   てんかん発作=ひきつけ(全身けいれん)との誤解がありますが、活火山が脳のどこに生ずるかで実に多彩な発作があるのです。例えば、後頭葉(視覚中枢)に生じれば、ピカッと稲妻が走る、前頭葉(運動中枢)であれば身体の一部分(指、腕、口角等)がピクピク動く、側頭葉では意識が曇り、もうろうとなる、などです。

 てんかんの原因=血の病、との誤解もまた多いものですが、現在では原因は大別して二つ考えられています。一つは出産時脳障害・外傷・脳炎などの他の脳障害に引き続いて脳の中に活火山ができてしまった状態。今一つは噴火を起こしやすい素質によって生ずるものです。後者は「てんかん素因」と称しますが、十割遺伝するというものでは決してありません。

 てんかんの診断は発作状況を詳細に調べることと、脳の電気を調べる脳電図(脳波)が必須です。現在てんかんは成因(特発性か症候性)と発作の起こり方(全汎性か部分性)によって大きく四つのタイプに分けられ、それぞれ薬の使い方や生活指導のあり方が変わってくるのです。

 治療には抗てんかん薬がつかわれます。(一部手術で完治する例もあります。)
 薬に対する不安も非常に強いのですが、脳の活火山が休火山を経て死火山になるまで、かなり長期の服薬が必要となります。

   基本的に重要なのは良い治療者=患者関係が結ばれることです。長期にわたる治療中、患者さん、親御さんの不安を取り除き、正しい道のりを歩いていけるよう、てんかん専門医は常に努力をはらっております。

 最後に、てんかんは癲癇と書きますが、癲は瘋癲(ふうてん=男はつらいよ!)の癲。癇は癇癪(かんしゃく)の癇です。「ふう」も「てん」も狂の意。(気狂いの寅さん?)

「しゃく」は「さしこみ」、「かん」は「ひきつけ」の意。したがって病名自体、「ひきつけをおこす狂人」との偏見を内包しているのです。

  (文責 森清幹也)

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