ポケモン事件と光過敏性てんかん

 ポケットモンスター(略称、ポケモン、家の次男も大好きです。)というアニメを見ていた子供たちに全身痙攣発作が生じた事件が全国的に多発しました。この件に対して、てんかん専門医としての見解を述べたいと思います。

 てんかん症候群の国際分類の一項目に「状況関連発作(機会けいれん)」という項目があります。定義としては、「てんかん素因のある人が、ある特殊な状況下においてのみ発作を生ずるてんかん関連病態。」という事です。具体的には、@乳幼児の発熱時に痙攣を生ずる「熱性けいれん」。これは良く見かけますね。A重症妊娠中毒時の「子癇発作」。Bアルコール依存者が急激に断酒したさいに生ずる「アルコール離脱けいれん」等があります。その一つとして、間歇光刺激下において光過敏性のある人に痙攣発作を生ずる「光誘発性けいれん」があります。今回の事件は、まさにその状態が全国レベルで起きたもの、と考えます。同じ状況で発作を繰り返して始めて我々は「光過敏性てんかん」と診断します。大多数の子供たちは今回のみのエピソードで終わるでしょう。
 それでは何故これだけ多くの子供たちに起きたか考えてみます。@母集団が大。(視聴率は20%を越え、もちろん見るのは子供。)A危険な光周波数。(10から20ヘルツが危なく、まさにその値のフラッシュであった。)B危険な色。(赤色により誘発されやすいが、赤と青の光が連続交代的に明滅した。)C視野全体に刺激が入った。(話は佳境になり子供たちはテレビに近づいた。)、その様な条件が重なったせいと思われます。
 以前より「テレビゲームてんかん」とか、話題にはなっていましたが、これだけ多くの症例が多発したケースは世界的に例無く、皮肉な表現をすれば、光過敏性を検索するまさに大きなフィールドワークになった、と云えましょう。

 「ポケモン」は今の子供たちにとって「のらくろ」であり「鉄腕アトム」であり「あしたのジョー」なのです。近視眼的な「アニメ犯罪論」に」組みしないよう、科学的な眼をもってください。てんかんは100人に1人は生ずる稀ではない病気ですし、「機会けいれん」を含めば、生涯に一度は発作を生じる確率は20%を越える、と言われています。
 「てんかん」という病気への偏見は一般のみならず、医師にも根強いものがあります。(筒井ファンの私でも許せなかったのが例の「教科書事件」なのです。)今回の事件がてんかんへの理解の橋頭堡に成らん事を祈っています。(森清 幹也)

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