2.頻度の多い不整脈とその対応

前回に不整脈のおおまかな種類をお話ししました。今回はよくみられる不整脈と その対応についてお話しします。
 脈が1分間に100回以上と速くなる頻脈でも運動や不安緊張等に伴うものは ほとんどの場合は治療が不要です。これに対して、脈が速くて治療が必要になる ケ−スとして、発作性の頻拍発作があります。これには心房などから起きる上室性 頻拍や、心室から起きる心室頻拍などがあり、それぞれ対応が異なりますので、 心電図等で正確に診断する必要があります。ただこれらは放置すると心不全その他 に陥って問題となる場合がありますので、早急に医師を受診して的確な治療を受ける 必要があります。このうち心房性の頻拍である上室性頻拍はそれほど緊急性を要しな いことが多く、首の頸動脈洞と呼ばれる部位のマッサ−ジなど迷走神経を刺激する 方法や、注射などで止めることが一般的ですが、心室頻拍は危険な場合が多く、後ほど 述べます。
 一方、脈が遅くなる徐脈性不整脈では、軽いものは放置してよい場合もありますが、 あまりに心臓の打ち方が遅くて失神のような自覚症状を起こすような場合や、心電図等 で心臓が5秒近く止まっていることが確認された場合などはペ−スメ−カ−という人工的 に心臓に電気刺激を送る小さな器械を植え込む必要がある場合があります。  脈が全く不規則になる心房細動という病気では、心臓に基礎疾患がある場合はそれに 対する治療が必要ですし、基礎疾患が無くても脈が速くなって心不全になったり、血液の 流れがよどんで血栓を作り、それが脳などに詰まって脳梗塞を起こすことが稀にあります ので、薬などの治療が必要です。
 また前回お話ししましたように、心臓が本来とは別の場所から早めに打つのを期外収縮 といい、心房性(これを上室性といいます)と心室性の2種類があります。これら期外収縮 は正常の方でも1日何個か出現することは稀ではありませんので、このような数が少ない ものはほとんどの場合放置しても差し支えありません。ただし期外収縮も数が多くなったり 連続して出たりすると何らかの治療が必要です。特に心室から出る心室性期外収縮が連 続して長く続くと、1分間に120ないし250回程の頻脈となって心室頻拍と呼ばれる状態 になります。この心室頻拍は危険な不整脈で治療が必要であり、この心室頻拍を放って おきますと、心室が不規則かつ無秩序に打つ心室細動という状態に移行することがあり ます。この心室細動の状態では血液は全身に有効に流れませんので3分以上続くと脳死 になります。従ってこのような心室細動は直ちに電気ショックで止めてやらないと生命に 危険が及びますし、その前段階の心室頻拍もそれに準じた処置が必要です。また心室頻拍 がしばしば起きる人についてはしっかりと予防の治療をする必要があります。ただこの心室 頻拍を起こすのは心筋梗塞や心筋症などの心疾患を持っておられる方が多く、元々心臓に 病気がない人で起きることは比較的稀です。
 また頻脈や徐脈が心臓以外の原因で起きることがあります。人の首の辺りに甲状腺という 器官があり、ここからは甲状腺ホルモンというホルモンが分泌されています。この甲状腺の 働きが異常に高まった状態を甲状腺機能亢進症(バセドウ病とも呼ばれます)といい、 この場合は脈が1分間に100を超えた頻脈になります。また甲状腺の働きが異常に低下した 状態を甲状腺機能低下症といい、この場合は脈が遅い徐脈になります。これらのうち甲状腺 機能亢進症では甲状腺ホルモンを押さえる薬を飲んだり、甲状腺機能低下症では不足した 甲状腺ホルモンを補う薬を飲むと、甲状腺機能異常が治るとともに、不整脈も治ります。

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